令和7年4月1日付で沖縄県地域医療支援センター長を拝命いたしました、琉球大学病院長の鈴木幹男です。本センターは平成26年12月1日に沖縄県の委託を受けて琉球大学医学部附属病院(現琉球大学病院)に設立され、今年で10年を迎えました。地域枠学生の教育及び沖縄県内の医師不足の状況等を的確に把握・分析し、医師のキャリア形成支援と一体となって、医師不足地域への人材支援等を推進することで、医師の地域偏在解消を目的に活動を続けてまいりました。
全国的にも、近年は地方を中心に医師不足や診療科偏在の課題が顕在化しています。地域枠による医学部の定員増加や医師の地域への定着を狙ったさまざまな取り組みが進められています。また琉球大学を含め従来の臨時定員の地域枠を恒久定員へ変更し、二次医療圏間の偏在や診療科偏在を調整する試みも始まりました。沖縄県は、多くの離島を抱えた島嶼県で、医師確保は地域にとって喫緊の課題です。全体としての医師数は増加傾向にあるものの、特に宮古・八重山の離島部や本島北部地域における特定診療科の専門医の不足は、いまだ解消には至っていません。
沖縄県の医療の歩みを振り返ると、沖縄県立中部病院が担ってきた研修システムの役割は極めて大きく、全国から集まった優秀な研修医たちが、離島や僻地医療を支えるという志を育んできました。15年遅れて設立された琉球大学医学部もまた、地域医療に従事する医師の育成や、医局を通じた地域派遣の体制整備を進めてまいりました。
このような背景のもと、県内唯一の医育機関である琉球大学病院が、沖縄県からの委託を受けて本センターを運営していることには、大きな意義があると考えています。人口動態の変化やさまざまな社会構造の変革が進む中、安定的に地域医療を支えるという本センターの使命を果たすべく、地域枠学生の教育支援・将来設計、研修体制の構築、地域枠以外の医師派遣に関する調整などを通じて、県全体を視野に入れた総合的な医師確保対策を実施してまいります。
2018年の医療法の改正により、地方自治体は「地域医療対策協議会」を設置し、医師確保に向けた具体的な協議・調整を行うことが定められました。本センターも、こうした県の取り組みにおいて、共同作業を進めて行きます。また、おきなわクリニカルシミュレーションセンタープロジェクト、研修医育成プロジェクト、医師確保に対する赤瓦プロジェクトなどを通じ、沖縄県医師会とのさらなる連携を強化し、医師確保に積極的に取り組んでまいります。
今後、地域医療支援センターの役割はますます重要になると予想されます。琉球大学医学部および病院は、沖縄県と協力しながら、センターの体制強化と機能充実を図り、今後も地域医療のさまざまな課題に真摯に取り組んでまいります。
引き続き、ご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。